人は誰もがリーダーである

人は誰もがリーダーである (PHP新書)

人は誰もがリーダーである (PHP新書)

ラグビー元日本代表選手、そして元日本代表監督の平尾誠二氏のリーダー論。
個人のモチベーションは、「内発的モチベーション」と「外圧的モチベーション」
に分けられるとする。やらなければならない状況に追い込んでモチベーションを
生じさせようとする後者より、自らの側から湧いてくる意欲である前者を引き出す
ことにより、個人の成長を促し、より成果を上げる方法論を説いている。
その為にコーチがしなければならないのは、「自分には何が足りないか」を
気づかせ、その克服の為に何をすれば良いかを自ら考えさせ、自然と自分から
積極的にスキルアップを目指すようにすることであるとする。

ではその為には具体的に何をすれば良いのか、というのがやはり読者としては
一番聞きたいところだと思うが、そこには、確かに自身の経験談や、他のスポーツ
の例も引き合いに出して示してはいるものの、やはり最後は、自分で考える
しかない、ということにはなる。これ、という正解がない問題ではあるので、
それは致し方ないと思うし、道筋を立ててくれている点では十分参考になる。

最近では、野球では野村克也監督や、ラグビーでは早稲田大学を常勝軍団に
引き上げた清宮監督などが、それを実行できている良い例だと思う。
平尾氏には、再びその経験と頭脳を生かして、日本ラグビーに希望をもたらす
働きをして頂きたいものである。

<印象に残った一節>
‘人は自分の弱さと葛藤することで強くなる。それを繰り返すことで、新しい自分を発見
できる。逆にいえば、不安やコンプレックスに苛まれ、「自分を弱い」と感じたときこ
そ、「強い自分」に変われるときなのだと思う。’(P25)
‘五連敗したときだったか、山田さんは当時の監督だった西本幸雄さんに呼ばれ、こう
言われたそうだ。
「勝てないのはいい。それは君を使っている私の責任だ。でも、自分自身を振り返ってみ
なさい。君は登板する前に、自分の調子をきちんと整えたり、相手を研究したりと、投手
としてやるべきことをちゃんとやってきたか?もし君がそうした準備を怠らず精一杯投げ
ているのなら、『なぜ山田を使うんだ』という声は起きないはずだ。それどころか君の
姿勢を評価して、なんとか勝たせてやろうと思うものなのだ」’(P95)